IN WIN製の小型PCケース「IN WIN Chopin」が発売されてから早4年。
登場当初から欲しいと言い続けていたケースでしたが、重い腰を上げつつようやく手に入れることができました。
憧れだった小型ケース、実際に組んでみたレビューを(今更ながら)お届けします。
パーツ紹介
ケース:IN WIN Chopin
今回の主役、IN WIN製のMini-ITXフォームファクターのケース「Chopin IW-BQ696」です。
150Wの電源を標準搭載しており、2.5インチシャドウベイが2個あるだけで拡張スロットが他にない、非常に割り切った構成のケースです。
外装はフルアルミで、外枠部分がコの字型のヘアライン加工となっています。
本ケースは完全に分解すると、コの字型の外枠を取り外すことができます。
また、上の写真では取り外していませんが、フロントパネルに相当する部分も取り外しが可能です。
外枠の取り外しには T15 のトルクスドライバーが必要になり、工具を所有していない場合はフロントパネルの取り外しはできないので注意が必要です。
CPU:Intel Core i3-10100
2020年5月末に発売が開始された、Intelの第10世代CPUです。
今回は、Coreシリーズの中でも最廉価品であるCore
i3-10100を採用することにしました。
価格は新品購入でも17000円ほどで、前世代のCore i5-9400Fとほぼ同額です。
第10世代のIntel CPUでは、AMDのRyzenシリーズへの対抗意識もあるとは思いますが、全体的にコア数・スレッド数を稼ぐ形で性能を上げてきました。
このCore i3-10100についても、i3でありながらハイパースレッディングが採用されることで4コア8スレッドとなりました。
内蔵グラフィックが搭載されている点では、Ryzen APUと同じような立ち位置にあるCPUになるかと思います。
M/B:ASRock H470M-ITX/ac
マザーボードは、第10世代対応品のITXマザーの中では安価な部類であった、ASRockのH470M-ITX/acを選択しました。
同社には H410M-ITX/ac という更に3000円ほど安いモデルもありますが、以下のような点で価格差以上に見劣りする部分が多かったため本モデルを選択しました。
- 電源フェーズ数が劣る(8フェーズ vs 5フェーズ)
- USB 3.2 Gen2 (Type-A)がない
- USB 3.2 Gen1 (Type-C)がない
- M.2スロットが1つ少ない(2スロット vs 1スロット)
- 2.5GbE LANが搭載されていない
マザーボードの付属品は、一般的なITXマザーと同様で、SATAケーブルが2本とM.2用のネジが2本、アンテナが2本、バックパネル、ドライバCDとマニュアルとなります。
アンテナは、M/Bから直接伸びるタイプになっており、ケーブルで遠くまで出せるタイプではありません。
メモリスロットは2スロットのDDR4、フロント用のUSB3.2 Gen1端子、SATAが4ポートと充実しています。
ファン端子はITXケースにしては多めの3系統です。
また、今となっては定番となったRGBA用のピンヘッダも当然備わっています。
電源フェーズ数は前述の通り8フェーズ電源で、ITXマザーとしては充実している部類です。
CPU用フェーズ(バックパネル側)には一体型の大型ヒートシンクが備え付けられています。
CPU用補助電源コネクタは8ピンタイプで、高TDPのCPUにも対応しています。
背面端子は、豊富なUSB端子と2つのLAN端子が目を引きます。
LAN端子は黒いほうがIntel I219Vのギガビット端子、青いほうがRealtek RTL8125BGの2.5GbE端子になります。
また、LAN端子の下のUSBポートはUSB 3.2 Gen2となっており、10Gbpsの通信に対応した端子となっています。
H470M-ITX/acで最も目を引くのはこの巨大なM.2用ヒートシンクでしょうか。
M/Bの半分近くがサンドブラスト加工されたシルバーで覆われています。
LAN端子裏近辺と、PCI Expressのイジェクトレバーの脇にあるネジを外すと取り外すことができます。
ヒートシンクの下側には、PCI Express 3.0x4接続に対応したUltra M.2が2スロット隠れています。
また、その下にはH470チップセットのヒートシンクが隠れています。
M.2の取り付け時には、この巨大なヒートシンクを取り付ける必要があるため、ヒートシンク付きのM.2は取り付けることができないため注意が必要です。
CPUクーラ:CoolerMaster MasterAir G200P
CPUクーラーは、IN WIN Chopinの高さ43mmまでという制限をクリアするために小型のクーラーを選択します。
定番品はNoctuaのNH-L9i/L9aなのですが、私自身があの茶色いファンが好きではないことや定番品を選ぶだけでは面白くないため、このG200Pを選択しました。
付属品は若干多めですが、Intel/AMD共通の部品が殆どであるため、あまりのパーツは殆どありません。
ヒートシンクはかなり目の細かいフィンで構成されており、2本のヒートパイプが目を引きます。
外寸は一辺が95mmの正方形に近い形となっています。
SSD:ADATA XPG SX8200 Pro (512GB)
SSDは、M.2 NVMeタイプのSSDのみで行くことにしました。
今回は価格帯の割に速度の出るADATA製XPG SX8200 Proを購入しました。
500GB帯で9000円を切る値段でありながら、公称値で39万IOPSを超えるランダム性能を誇る、コスパフォーマンスに優れた製品です。
このSSDは、ヒートシンク(と言う名のアルミ板)が付属してきますが、今回は利用しません。
メモリ:ADATA AD4U266638G19-D
メモリについては、今回は余り物を利用します。
当初は、CorsairのVengeance Pro RGB (DDR4-3000) を利用する予定でしたが、後述の理由により断念することとなりました。
組み立て
CPUの搭載
久しぶりのIntel製CPUでしたが、従来のLGA115x系と何ら変わることのない、いつもどおりの取付作業です。
しかし、ここ最近はずっとAMD系だったため、LGAソケットの取り扱いに少し緊張してしまいました。
相変わらず、初回のレバー下げは緊張してしまいます。
メモリとSSDの取り付け
この時点では、メモリはCorsairのVengeance Pro RGBを取り付ける予定だったので、そちらを取り付けています。
M.2スロットはCPUに近い側がM2_1スロットであったため、そちらに取り付けました。
CPUクーラーの仮置
購入したMasterAir G200Pは寸法上はChopinに収まるサイズでしたが、マザーボード自体のコンポーネント(ヒートシンクやコンデンサなど)との干渉により取り付けられない可能性もありました。
ケースに収める前に、干渉がないか確認します。
G200Pの取り付けは、バックプレートにブリッジをネジ止めし、その上からヒートシンクを載せて上からネジ止めをするタイプです。
ヒートシンクを取り付けると、メモリ側、M.2スロット側、VRMヒートシンク側の全てにおいて数ミリの余裕しか無いというピッタリサイズでした。
エアフロー面での心配はありますが、取り付け不能ではないことが分かったため一安心。
一旦、ヒートシンクは取り外して組み立てを続けます。
ケースへの組み込み
コレまでもかなりの台数Mini-ITXケースで組んできましたが、総じて言えるのは配線は組込前に終わらせることです。
電源ケーブルやフロントヘッダピンなどの取り付けが難しいものや、ファンコネクタのような小さいケーブルは組込前に取り付けておきます。
ケーブルの硬いフロントオーディオやUSB3.2 Gen1ケーブルなどは、フロントパネルの内側に折りたたんでしまい込んでおきます。
ケース内にはほとんど余裕がないため、余分なケーブルはできるだけM/Bトレイ側から出しておく必要があります。
メモリの大きさに問題発生
さて、上の画像を見てお気づきでしょうか。
左側に見える、ケースの外枠と比べてメモリがかなり飛び出ていますね。
CPUクーラの制限から分かる通り、このケースには高さ43mmという制限がありますが、Veangence Pro RGBは高さ51mm、明らかに足りません。
このケースは、実際にはサイドパネルがメッシュで3mmほど盛り上がっているため、公称の43mmより高いCPUクーラは取付可能ですが、流石に8mmの誤差を埋めるほどの余裕はありませんでした。
試しにサイドパネルを閉めてみると、明らかにパネルが浮き上がってしまいました。
やむを得ずこのメモリの利用は諦め、ヒートシンクのないADATAのメモリを利用することとしました。
CPUクーラーの取り付け
グリスには普段から使っているArcticのMX-4を使います。
いつもどおり、センターう○こ盛りで利用します。
ヒートシンクを取り付けて、上からネジ止めをします。
ファンの取付も、クリップではなくネジ止め方式なので狭小ケースでも楽でした。
クリップ式の場合、指の入るスペースがない場合に非常に苦労する場合があります。
完成!
バックパネルにWi-Fiのアンテナを取り付けて完成です。
本当はメモリもホワイト系になり統一感が出る予定だったのですが、急遽変えたのでグリーンの基板が目立つ感じになってしまいました。
最後に、Windows10をインストールしてライセンス認証し、リビング等で使える小型PCの完成となりました。
性能確認
Cinebench R15
CPU性能自体のベンチマークは様々なサイトで実施されているため、ここでは簡潔に済ませますが、端的に言うと数年前までメイン機で利用していた Core i7-6700とほぼ同じスコアを叩き出す結果となりました。
当時4万近い価格だった上位CPUと、下位シリーズの最新CPUが同じスペックという結果は、鈍いと思っていたIntelの性能向上も実はちゃんとされていたんだなと気づくきっかけとなりました。
感想
発売直後から「良い見た目だな、欲しいな」と思いつつ、あまりの拡張性の無さなどから購入を躊躇していたChopinですが、いざ手にしてみるとその美しさや機能美には改めて惚れ惚れとします。
買ってよかったな、持ってて良かったなと思える一品でした。
また、Intel製CPUを使うのはCore i7-6700以来でしたが、しっかりとIntelも性能向上しているんだということを実感できました。
以前の形勢からガラッと風向きが変わり、「AMD一強の時代」などと言われて久しいですが、たまにはしっかりとIntelの状況も把握して、どちらか一方の信者にならないように気をつけていきたいですね。